Think about "Rotary DJ Mixer" ロータリーDJミキサー考察
DJだったら持ってなくても知ってたり触ったりした事はあるであろうロータリーDJミキサー。音は素晴らしいけど高価なため、憧れてはいるものの手が出ないって方も多いのでは!?
今でこそ昔ほどクラブ現場での遭遇率はないわけですが、音質の良さや操作性の高さで未だに高い人気があります。自分は使わせて頂いた事はあるものの、高価なためさすがに買うまでには至らず...
ただ、そろそろいい歳ですしw、今(2012年9月初頭現在)なら円高のおかげで海外製品は以前より割安という事もあって、そろそろ欲しいな~と…
で、ここ数ヶ月ほど色々調べてはいたんですが、意外とまとめてある日本語のサイトがないっていうのと、覚えた知識を忘れないための備忘録としてまとめを載せときますw
あくまで自分の主観や調べた限りだったり貧弱な英語力での理解だったりしますんで、くれぐれも参考までに。むしろ、間違いがあったりしたら教えて下さい。
※2015年1月28日追記
RaneからハイエンドなロータリーDJミキサー「MP2015(下記画像)」が発表されました!記事にまとめていますので、ぜひ御覧下さい。http://www.pastimedesignworks.com/2015/01/rane-dj-mp2015.html
[BOZAK CMA 10-2DL]
言わずと知れた"King of DJ Mixer" 市販された世界初のDJミキサーであり、すべてのDJミキサーの原点。高級オーディオ等で有名なマッキントッシュ社のスピーカーや米軍のレーダー等を設計・制作したRudy Bozak氏の名前を冠し、彼を含めわずかなエンジニアで作られたこのミキサーは、販売を開始した1972年当時でも大変高価なオーディオ機材でした(ちなみにTechnics SL-1200もこの年に販売スタート)。電気回路を構成する高級な個別部品を使用した(近代の便利な集積オペアンプでは再現できない)このミキサーは、後にUrei 1620(BOZAK CMA 10-2DLの中身を廉価パーツでコピーした普及機)などにコピーされ世界中に広がりました。Larry LevanのParadise GarageやWAREHOUSEなどで使用され、DJ機材の歴史に名を刻みます。1982年にRudy Bozak氏がこの世を去った後も数年間は製造されましたが、製造台数は他のどのロータリーDJミキサーよりも少なく、今でも手に入りにくく高価な製品です。BOZAKのエンジニアはその後UreiやRANEに移ったり、現在もアメリカ国内で工房をやったりして活躍されています。最近(2012年9月現在)、ebayにこのBOZAK CMA 10-2DLをBOZAKが閉鎖されるまでエンジニアを務めていたBuzzy Beckさんの現在の工房でカスタムしたという物凄い逸品が出品されています。気になる方はこちらからチェックしてみて下さい。
音質 : 音質は素晴らしいの一言に尽きます。Ureiに比べて中低音が太い。特に低音の伸びは特筆もの。操作性抜群。レコーディングエンジニアがマスタリングの際に使ってたりします。
購入の際の問題点 : とにかく高価。Urei以上にパーツがない。ビンテージ機材のため、使用・保存状態により個体差が激しい。製造時期(前期・後期)によって音質の特徴が異なる。
[BOZAK Classic rotary mixer AR-6]
イギリスのAnalog Development社が復活させたBOZAKブランドから2011年に発売されたロータリーDJミキサーかつ数少ない現行品。外観はクラシカルなデザインだけど、現在のDJの要望に応える多様性を備えつつ、またオリジナル Bozakアナログ電気回路を用いて設計されてるそうです。オリジナルと比べるとやはり別物との事ですが、それは善し悪しではなく、聴いた人がどんな音が好みかの問題だろうと。ファットでありながらストレートな音質というか。オリジナルより堅い感じらしいです(これはオリジナルが経年劣化してるからかも…)。現行で手に入る数少ないロータリーDJミキサーです。国内にも正規代理店があるので、修理やメンテも安心です。また、国内ではまだ販売されていませんが、EQ-6という外部プロセッサも用意されています。
音質 : ファットでいてクリア。よく通り、爆音で聴いていても疲れない。
購入の際の問題点 : 高い…ビンテージが買える値段…
[UREI 1620 Music Mixer]
フランク・シナトラ、ナット・キング・コール、レイ・チャールズのお気に入りエンジニアであり、今でもエンジニアから支持される普遍的な名機 LA-2A、1176 コンプレッサー、610 チューブコンソール等を世に送り出した故ビル・パットナムSr.によって設立されたUnited Recording Electronics Industries (UREI)社が1982年に販売開始した最も有名なロータリーDJミキサー。その後、JBLに吸収(→消滅)される前まで、約5000台のUREI 1620が製造されました(一部のエンジニアはRANE社などに移り、RANE MP2016等の開発に携わっているようです)。このUREI 1620、現在でも大人気で知名度はオリジナルといえるBOZAK(UREI 1620はBOZAKを模倣して普及パーツで作ったのは有名な話。ただし、このミキサーのパーツの組み合わせが奇跡とも言えるクオリティーを引き出したため、高級オーディオメーカーとしてどの商品も評価されたBOZAKと比べて、UREIはこのUREI 1620と1176 コンプレッサーが特筆して評価されている。)よりも高く、音質がBOZAKに比べてHOUSE向きでもあるためか特にHOUSE MUSICファンの支持は絶対的です。BOZAKと同じくやはり高価ですが、普及機だったためかパーツは意外と多く(海外で探すと結構出て来るし国内より安い)、国内でも高額ではありますがメンテや修理は専門業者で行えます。
音質 : 音質・操作性ともに抜群。BOZAKに比べてストレートでのびやかで、レコーディングエンジニアがマスタリングの際に使ってたりします。
購入の際の問題点 : 高価。ビンテージ機材のため、使用・保存状態により個体差が激しい。
(今のところ、現実的に購入するとしたらこのミキサーかな~ 国内流通量も一定であるし、パーツも売ってるので。)
[UREI 1620 le]
2005年にイギリスのSoundcraft社がUrei 1620をオリジナルにできるだけ忠実に限定復刻したロータリーDJミキサー。オリジナルとは違って、音質は癖がなく伸びやかでストレートな音質というか(これはBOZAKと同じくオリジナルが経年劣化してるからかも…)。個人的にはオリジナルもleもそれぞれ好きです。現在のデジタルサウンドにはオリジナルUreiよりこのleの方が合うと思います。あと、国内に正規代理店もありますんで、オリジナルよりはメンテしやすくパーツもあるかと。すでに生産停止で販売もされていません。
音質 : 伸びやかでクリア。高中低のバランスがいい。
購入の際の問題点 : 限定生産の上に生産終了で、ビンテージ並に値段が上がってきた。
(これもオリジナルと同じく購入候補ですね。友人が持っているので触った事があるっていうのも、プラスになってますw)
[RANE MP2016]
BOZAK・Ureiの操作性などを引き継ぎつつ、1999年に発売された現行でも製造している数少ないロータリーDJミキサー。RANE MP2016→RANE MP2016a→RANE MP2016sとアップデートされ、その度に仕様変更があります。音質的には最初のRANE MP2016の評価が高いようです。値段はビンテージ製品よりも安いが、普通のDJミキサーよりはやはり高い(15万以上)です。専用外部プロセッサでRANE XP2016があり、フェーダーやEQを追加できます。レコーディングスタジオでよく見かける機材で、DJやサウンドエンジニアがレコーディングなどで使っているのをよく見る。実際に某有名アーティストと話している時、メジャー流通のMIX CDはこのミキサーを使ったと言っていました。現行品であるため、修理などの対応は問題なし。国内で正規流通もしているが、海外との価格差を考えると、変圧機を購入したとしても海外で購入するとずいぶん安い。デジタル使用も考慮されています。
音質 : 他の現行ミキサーに比べるとファットな印象だが、前述のオリジナルBOZAK・Ureiと比べると、素直で原音に忠実。
購入の際の問題点 : 一般的な現行DJミキサーに比べると国内では高価。2016、2016a、MP2016sで音質の特徴が異なる。
[allen & heath xone V6(上)]
[allen & heath xone S6(下)]
2002年にallen & heathが世に送り出した最強のロータリーDJミキサー。真空管搭載でフェーダーはPENNY+GILES製と隙がなく、しかも値段も40~70万と隙がなさすぎで、未だに現物を見た事も聴いたこともありません…BOZAK・UREIのコピー製品とは明らかに違うコンセプトで、真空管独特の柔らかさを持ちつつも圧倒的な音質を実現した現代のロータリーDJミキサーとの事ですが…こればっかりは、他のどの商品とも違い海外でも全く見かけません。むしろ、教えて欲しいですw オーディオサイトなどで見る限り、マイナス評価を一切見かけません。すでに生産停止です。
音質 : ?
購入の際の問題点 : そもそも、国内外問わず中古でも売っていない。昔ヤフオクに20万後半で出ていて落札されてたが、それでもかなり安いと言われてました…見かけたらフルローン組んででも即買いしますw!
[allen & heath xone S2]
どこの機材店でも購入可能なロータリーDJミキサーの数少ない中の一つです。まさに現在のクラブサウンドにばっちり合うパンチの利いたクリアな音質で、4つ打ちにもってこいです。値段も10万以下とちょうどいいくらいにこなれてきてるので、ロータリーが欲しい方にはおすすめかも。見た目がクラシカルではないんですが、その分USBなどの接続も可能で、機能的にも素晴らしいです。
音質 : クリアでパンチがある。ストレート。
購入の際の問題点 : 特にない。国内に代理店があるので、メンテや修理も正規で可能。
[ARS MODEL 4100 DJミキサー]
国内でUREIなどのプロ仕様DJ機材を販売するALPHA MUZIQUEのオリジナルブランド Alpha Recording System製で、設計から部品までひとつひとつ細かく徹底的に追求し、とことん出音にこだわって作られた2Uサイズのオール・ハンドメイドのロータリーDJミキサー。音質劣化を最小限にするために必要最小限の機能しかインストールされていないシンプルな作りです(PanもEQもない)。高・中・低音がそれぞれはっきりとれるクリアな音質は、下手なビンテージミキサーをも凌駕します。別途EQやクロスオーバー等も販売されています。メジャーメーカーとは一線を画すこだわりの逸品です。
音質 : 透き通るようなハイファイサウンド。
購入の際の問題点 : 定価は248,000円と高価。中古は10万後半で取引されている。国内で製造販売されているので、メンテや修理も安心できる。
[Vestax R-3]
2大国産DJブランドのひとつ VESTAXのフラッグシップ機。現在(2012年9月)もショップで手に入るベスタのロータリーの最高位モデルで、VESTAX WORKS 第一弾のインストレーション用DJミキサーという、まさにVestaxの集大成です。そのハイクオリティーな内容に相応しく、値段も30万近いくと高額です…独特の外観・配置や高音質などで有名です。Vestaxは長いDJ製品制作のノウハウに加えて、Ureiのカスタムで有名な方がいらっしゃったりして、かなりクオリティーが高いようです。オリジナルのBOZAKやUreiの様に、集積された回路やパーツを使うことなく一つ一つの部品を丁寧に組みあげて作り上げていた時代のアナログオーディオの原点に戻り設計されているとの事です。関西のどこかのクラブに常設されてた覚えが... 前述のとおりVestaxは日本のブランドなので、メンテや修理も国内で可能です。
音質 : 精密なハイファイ・サウンド
購入の際の問題点 : 値段が…。
[Vestax R-2]
上記R-3と同じく国産DJブランド VestaxのロータリーDJミキサー。R-3よりも硬い音(テクノ・ミニマル)にも合うそうです。ディスコンですがまだ専門店などで手に入ります(2012年9月現在)。基礎回路においても位相を崩すコンデンサーをなるべく使用しないようにし、使ってもそのブロックに合ったメーカーのものを選別してブレンド使用。基板アートワークや取り付け位置の関係も音質重視した設計との事。実売価格は10万前後から15万ぐらいで、R-3よりはかなり安くなっていますが決して音質で劣っているわけではなく、もはや聴く人の好みかと... ベスタは当然日本のブランドなので、メンテや修理も国内で可能。海外ブランドより安心して購入できます。
音質 : 硬くてストレートなサウンド。
購入の際の問題点 : 特になし。
[PIONEER DJM-3000]
2大国産DJブランドのひとつ PIONEERのロータリーDJミキサー。現行で手に入ります(2012年9月現在)。PIONEERやRANEは縦フェーダーをロータリーに変更するキットが発売されていて、通常のミキサーでもロータリーにできたりします。音質はPIONEERらしくデジタルって感じで好き嫌い別れるでしょうが、もはや日本はおろか海外でも標準的に設置されているPIONEERブランドなので、現場で他のPIONEERミキサーが設置されていても戸惑う事がなくプレイできそうで、いいのかも。新機能のエフェクトミックスなども入っています。前述のとおりPIONEERも日本のブランドなので、メンテや修理も国内で可能。サポート対応には定評があります。
音質 : デジタルでフラットな印象。
購入の際の問題点 : 特になし。
さて、ラックマウント↓のロータリーミキサーばかり紹介してきましたが、それ以外のロータリーでも下記のように
フランス生まれで音質に定評があり、最近大人気のE&S DJR400とか
情報が少なすぎて謎な(誰か教えてwww!)ロンドン発のdiscothequen77とか
RANE empathのロータリーバージョンとか
Allen & Heath Xone 92のロータリーバージョンとか
ディスコンのVestax PMC-46 MKIIとか(これはラックマウント可)
があります。いずれも人気がありますね~ ただ、どれも本当にいいお値段が…w 他にもオールドのRANEやベスタなどでもロータリー仕様の名機があったりします。まあ、中古で数が少ないので載せませんが、値段が手頃ですんで興味がある方は調べて見てください。結構面白いですよ~
まあ、いずれにせよ結局は自分の欲しいモノを買うのが一番だと思いますので、購入するのであれば色々調べたり触ったり聴いたりして、満足のいく一台を選びましょう♪
以上、ロータリーDJミキサーのまとめでした! お付き合い頂き、ありがとうございました!
※追記
結局、円安のおかげでかなりいい値段でメンテ済の[BOZAK CMA 10-2DL]をアメリカで発見したので2012年10月初頭に取り寄せました。今までのDJミキサーとは勝手が違いますが、ロータリーDJミキサーは凄く楽しいです♪そのうち、自分のレギュラーイベントに持ち込む予定です。